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《インタビュー》三浦貴生(Noah’s ART​ )-​アーティス​トの自分を「プロデュース」する​-

《インタビュー》三浦貴生(Noah’s ART​ )-​アーティス​トの自分を「プロデュース」する​-

アーティストインタビュー

Illustrator / Doodler

(イラストレーター/ドードーラー)

三浦貴生:Noah’s ART

トライバルデザイン(部族)とボタニカルデザイン(植物)をミックスしたような、緻密で繊細なドローイング。

Noah’s ARTの名前で活躍するアーティスト・三浦貴生は、医療の道を捨て海外へ渡航、その後独学で絵を身につけたという珍しい経歴の持ち主だ。

アンダーウェアのデザインから壁画の作成まで活動の場は多岐にわたるが、依頼を受けるきっかけの多くはインターネットでの発信。

どのSNSでどう見せるか、理論的に計算し更新を続けているという。

表現者であると同時に自らのプロデューサーでもある彼の、制作活動の裏側は。

 

異色のバックグラウンド

医療系の大学で、心理学・言語聴覚療法学を学んでいました。

「言語聴覚士」という国家資格を取得したのですが、就職活動をせずに少し時間をおいてニュージーランドに渡ったんです。帰国後東京で英語を使った仕事に就き、フリーで活動したのち、一般企業に勤務しつつ絵の仕事をメインに働くという現在のスタイルに至ります。 コンペ・賞にはあまり出さず、SNSで公開した作品を見て仕事を依頼していただく形がほとんどです。

経歴というよりファーストインパクトで「作品がいい」と思ってくださる方からの問い合わせが多く、8〜9割は海外のクライアントです。

 

医療の道を捨てニュージーランドへ

 三浦貴生 Noah's ART

Floral Peacock』制作過程

 

ニュージーランドへ渡航し、現地のトライバルデザインに出会ったことがきっかけで絵を始めました。

実は「言語聴覚士(​ 失語症や脳梗塞による言語障害のリハビリテーション専門職)​ 」の資​格をとるための病院実習で考えた2つのことが、海外へ出た理由なんです。

1つは、知識があるから必ずしも患者さんの病気が良くなるわけじゃないという事実です。大事なのは患者さんへのサービスとコミュニケーションなんですよね。その2つが好きで、心からやりたいと思ってこそ、本当に役に立つことができる。じゃあ自分は本当にやりたかったのかと自問した時に、そうじゃないと。

もう1つは「死生観」です。

特に脳梗塞は、完治するのが難しい病気です。リハビリをしても、病気になる前の状態まで戻るケースはなかなかありません。

もし自分が​今まで通り健康で生きていけないという状況に突然陥った時、人生よかったなって思えるかな?と疑問に思ってしまったんですよね。

大学は卒業し資格もとりましたが、ここで1度人生を考え直してみようとモラトリアム期間をとったんです。

 

ただ潜在的な負い目があったのか、当時はよく夢を見ました(笑)

僕のいる部屋にたくさん扉があって、1つ1つ開けていくとそれぞれで同級生たちが一生懸命勉強しているんですよ。

 将来を決めることから逃げ出したみたいな自覚があったのかもしれません。 今でも「最近頑張ってないなあ」と感じると同じ夢を見ることがあります

 

現地部族のタトゥーがインスピレーションに

三浦貴生 Noah's ART
Botanical wave × Bat』制作風景

 

卒業したもののやりたいことが見つかっていたわけではなかったので、とにかくたくさんのアルバイトを経験しました。

そのうちの1つが、大学時代ブラジルからの留学生と共に足を運んだことがあったJICA(青年海外協力隊)の施設での仕事です。

様々な人に出会ううちに「国際協力」や「海外」に興味が湧いてきて、卒業後1年半でニュージーランドへ旅立ちました。ちなみにニュージーランドを選んだのは、出身地の札幌とクライストチャーチという街が似ていたということ、英語圏であること、後は治安を考えての結果で、特別な理由はありませんでした。

語学学校に通った後旅をしていたんですが、作風のベースとなるトライバルデザインに出会ったのはこの期間です自由な雰囲気と自然、現地のマオリ族のトライバルタトゥーのデザインにインスピレーション受け、絵を描くようになりました。

褒めてくれる人が多かったので「やってみようかな」という気持ちになり、帰国後も続けて描くことに決めました。

 

アナログ×デジタルな制作過程

三浦貴生 Noah's ART

Boanical Ape』制作風景

 

鉛筆や細いペンで紙に下書きし、トレースしてphotoshopで色をつけるのがドローイングの基本的な制作過程です。 素材が木の板やなら、電気ペン(半田ごてのようなもの。電気で加熱して刻印する)を使うこともあります。

「もう早く完成させてしまいたい」と思った時点で雑になるので、その前にリフレッシュする時間も大切にしています。

ただ、完成形が望んでいるものになりそうだと感じた時は、寝る間も惜しんで作業を続けます。寝るとリセットされてしまうので、ある程度の段階まで一晩で描きあげてしまいますね。

 

柔軟な挑戦がチャンスを作る

三浦貴生  Noah's ART

泊まり込みで制作した美容院の壁画

 

書籍、アパレル、壁画、プロダクト、ワークショップ、名刺。こだわりがないのがこだわりというか、依頼があれば柔軟にトライするようにしています。

中にはお金が発生しないケースもありますが、今は特に「やっていて楽しいか」「チャレンジできるか」「素敵な人と一緒にできるか」などの条件の方が大事です。挑戦していくうちに、後から他のつながりも生まれてくるだろうと。

印象的だったのは、泊まり込みで美容院の壁画を担当したことです。会社勤めが終わってから週3日通い、土日は泊まり込みで1ヶ月半かかりました。普通の「ポスカ」を使うのでで、1本10分くらいでインクがなくなるんですよね。

また、公園でのふとした出来ごとが仕事に繋がったケースもあります。代々木公園で紅葉したイチョウの葉っぱに絵を描いていたら、それを見ていた友人に植物を使ってアクセサリーを作っている人を紹介されて。

葉っぱがそのままかんざしのデザインになって、あるファッションショーで使われることになったんです。

それぞれ試行錯誤するので、自分の絵は少しずつ変化したり上手くなったりしているなと感じます。

0から考えてできた作品というより、見てきたものや経験したことに影響を受け​、いろんなものが混ざってできたオリジナルという言い方のほうが近いかもしれません。

 

「見せ方のマーケティング」

 

How to draw Botanical doodle / Zentangle #11

 

ブログ、動画、SNS…何をどのメディアで、誰に見せたら一番面白いかと、常に考えながら更新しています。

例えばペンで細かい模様を描く過程は動画で、絵が完成し商品になったものは画像で、というような棲み分けです。

マーケティングについて考えるのが得意で、どの国の人が自分のHPをどれくらい見ているのかといった解析も、ツールを使って行います。スパイスを使ったアーティストとして活動する妻のブランドロゴを作成したこともあります。ものを作る側よりも、プロデューサー的な役割が好きなのかもしれません(笑)

幅広い発信を続けるには手間も労力もかかりますが、見てくれる人に上手く刺さって仕事に繋がった時は「自分でとってきた」という達成感があります。

 

実際に、ドローイング動画がきっかけで六本木ヒルズの『YouTube Space Tokyo 』での展示依頼を受けるなど、様々なチャンスにつながっていると感じます。

今「アーティスト」っていうと、食べていけない職業という印象を持たれがちです。

自分の活動を見てみんながアーティストになりたいと感じてくれるくらい、上手く見せ方を考えて活躍できればいいなと思います。

 

いつか自分の作品で感動したい

三浦貴生 Noah's ART

Botanical 般若

 

僕にとって表現とは「理想の追求」です。

素晴らしい作品に出会ったとき「うわーっ」って思い切り衝撃を受けることがあります。

しばらくその作品の前に立ち止まってしまったり、頭から離れなくなったり。その衝撃を自分の絵で感じたくて、理想とするものに近づくよう描き続けています。

着たい服を作るのが目的でアパレルブランドを立ち上げるようなものかもしれません。

上手い下手の問題ではなく、もちろん絵としてもよくて、エンタメ性もあって、驚きもあって。

誰が見ても「なんだこれ、すごいな」「頭の中、どうなっているんだろう」と感動してもらえるようなものができたら嬉しいですね。

 

その他作品はこちら:Noah’ s ART

 

アーティストプロフィール 三浦貴生

(アーティスト名  Noah’s  ART)

1983年生まれ。北海道・札幌出身。言語聴覚士の資格を取得後、ニュージーランドに渡航。現地のマオリ族のトライバルタトゥーに影響を受け、絵を独学する。

主な活動暦に『BETONES UNDER WEAR CONTEST 2012 入賞(2012)、YouTube Space Tokyo ART NIGHT』展示(2015)、銀座三越『ART & CREATION 2015』展示(2015)、書籍「Magic & Lines Ⅱ」掲載(2016)など。

 

Cover Image :Floral Kea 』Noah’s  ART 三浦貴生

タグ: ドローイング / 動物 / 旅行 / / キュレーション / instagram / SNS

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