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アートはテクノロジーとともに進化する〜VRから見えるアートの未来とは

アートはテクノロジーとともに進化する〜VRから見えるアートの未来とは

Photo from Royal Academy of Arts

 

 2017年の1月から、ロンドンの権威ある美術学校ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツが、最新テクノロジーを活用した、これまでにないデジタルの展覧会「Virtually Real」を開催します。VRを使って作られたデジタルな作品が、3Dプリンタによって現実へと変換される、歴史上初の展覧会になるそう。

 今あらゆる分野で熱い視線を集めるVR(ヴァーチャル・リアリティ、もしくは仮想現実)。VRにおいては様々な世界を表現できる一方で、そこはあくまでもデジタルの世界なので、物質として触れることができません。しかしこの展覧会ではそうしたVRの非物質性の限界に挑むべく、同じく今旬のテクノロジーである3Dプリンタを利用しています。アーティストがGoogleの開発したVRのお絵描きソフトTilt Brushで描いた世界を、3Dプリンタを利用して手で触れられるよう物質化することで、これまでのVR関連の展覧会とはまた違う新しい表現に挑戦しています。 

 

VRに熱い視線を送るアーティストや美術館

 

Photo from Royal Academy of Arts

 

 VRが急速に普及し、今や展覧会でVR機器を装着するということも珍しくなくなってきました。VR関連の展覧会でいえば、つい最近日本でも公開されていたBjork Digitalという展示は、世界何カ国にまたがって開催され、注目を集めました。テクノロジーに深い関心のあるビョークは、自身のミュージックビデオにVRを積極的に取り入れて、その表現は国内外の美術館で展示されるようなアート作品としても評価されています。ビョーク曰く、テクノロジーは従来の楽曲制作のプロセスにとらわれないので、女性を解放してくれるのに非常に力のある表現ツールだそう。

 「女性にとってテクノロジーは、本当に力を与えてくれるものだと思うの。だって、これがあれば私はもうスタジオの家父長制から解放されて、自分で音楽作りができる環境ができたんだもの。大勢のスタッフの中で自分の役割を果たすのではなく、90%くらいまで自分だけで創作ができるわ。」1

 

表現ツールの革新がアートの革新をもたらす

Photo from Royal Academy of Arts

 

 現代アートを語る上で今や欠かせないのが、テクノロジーとの関係です。現代アートにおいては最新のテクノロジーを使った作品が珍しくなく、今やテクノロジーとの関係は無視できるものではありません。今大人気のteamLab(チームラボ)の作品も、VRなどのテクノロジーを使ったものです。現代アートの表現のメジャーなツールになりつつあります。美術愛好家やアーティストの中には、進化していくテクノロジーの表現に対し、「これはアートではない」と批判的な人もいます。けれど技術の革新は、あなたもよく知る芸術作品が生まれたきっかけになっているかもしれません。

 例えば19世紀にフランスで生まれた印象派の活躍も、そうした技術革新が支えていた一面があります。印象派の画家たちは、一瞬一瞬の光の変化を観察し写し取った数々の素晴らしい絵画を残しました。それゆえ彼らの多くは戸外での長時間の制作を行うことが多かったのですが、それを可能にしたのが、19世紀中頃に出てきたチューブ入り絵具の発明です。

 

 

Photo by Art Gallery ErgsArt from Flickr

 

持ち運びが可能な絵の具が生まれたことで、多くの画家はアトリエから屋外での写生ができるようになりました。光の実験を繰り返した彼らを支えたのが、当時発明された技術だったというわけです。

 近現代に入ると、写真や映画の技術が芸術に与えた影響も見逃すことはできません。絵画や彫刻などといった古典的な芸術は、基本的に一点もので、展示されている場所に見に行かなければなりません。けれど技術革新により、アートが複製可能になりました。20世紀には、シュルレアリスム、ダダイズムやポップアートなど、これまでの美術に新しいインパクトを与えた芸術運動やカルチャーが生まれました。芸術家たちは当時新しかったテクノロジーを自身の表現に取り入れていきました。歴史を丹念に見ていくと、多くのアートは、文明の進歩により変わっていく社会に深く根ざしたものだということに気がつきます。そして21世紀を生きる私たちには、絵の具ではなくTilt Brush、そしてカンヴァスはVR空間という創作が当たり前になっていくかもしれません。

 

テクノロジーは21世紀のデュシャンの便器?

 

Photo from Royal Academy of Arts

 

 小説家、美術家であるダグラス・クープランドは、「テクノロジーが、21世紀におけるアーモニーショーのデュシャンの便器だとしたらどうだろう?テクノロジー=アートという考えも、憂いるものではないだろう?」と問いかけています。2

 ある時デュシャンがアーモニーショーに応募した作品は、なんと「便器」でした。審査員たちは怒って作品の出展を拒否しました。けれど今では美術史にドュシャンが残した功績を否定できる人はそういないでしょう。今見られるアートにおけるテクノロジーも、やがては歴史上の大きな転換点の一つと数えられるかもしれませんね。

 「Virtually Real」は、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの卒業生であるエリオット・ドッドとアダム・ファラマウィー、そして学校の三年生であるジェシー・ジェットパックスによる共同制作です。HTC ViveKodon, そしてTilt Brushを使い、従来の重力、時間、媒体の限界に挑戦するインスタレーションを発表します。彼らの創作は、VRと3Dプリンタの両方で出力されたインスタレーションというこれまでにないものになるでしょう。4日間という短い会期ですが、夢中になること必須の体験です。チケットは近日中にロイヤル・アカデミーのウェブサイトで販売される予定。

 

出典

Hannah Ellis-Petersen. Björk: ‘I build bridges between tech and the human things we do’.

Douglas Coupland. What if There’s No Next Big Thing?

 

ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ

Virtually Real” at the Royal Academy from January 11-14, 2017.

 

タグ: VR / ロンドン / 現代アート / 芸術運動 / テクノロジー

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